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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2025.04.24,Thu
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Posted by tafuto - 2007.10.12,Fri

 
 

タルタロスに組み込んだ地核の振動を止める装置が出来上がり、いよいよ決行となったその時、シェリダンをオラクル兵が襲ってきた。
アスランが、連れていた兵でオラクルを食い止め、一行をシェリダン港に向かわせる。
ヘンケンが機転を利かせて港を襲ったオラクル兵を眠らせたので、一同でタルタロスに乗り込もうとした時、ヴァンが現れた。

行かせまいとしたヘンケン達をヴァンが切り捨てようとしたその時、アッシュの剣がヴァンの剣を食い止めた。ぎぎっと鈍い音が響き、一瞬後に双方飛び離れる。そこにリグレットの銃弾が突き刺さる。

「さっさと行け! 早くしろ!」
ヴァンを見据えたままアッシュが叫ぶ。
「アッシュ!」
叫んだルークは決意したように身を返すと、タルタロスに向かって走り出した。
追おうとするヴァンと、行かせまいとするアッシュが切り結ぶ。
そこに豪快なメテオスォームが降り注いだ。

シリウスが親指を上げ、タルタロスに乗り込むのが一瞬視界に写った。
譜術をかわそうとするが、防ぎきれずダウンするリグレット。
よろめいたヴァンの隙を見逃さずにアッシュは間を詰め絞牙鳴衝斬を放った。
「やるなアッシュ」
にやりと嗤うヴァンをアッシュは睨みつけた。

「アッシュ殿!」
駆けつけてきたアスランの声を聞き、ヴァンはリグレットを連れて身を翻し、その場から立ち去った。
「ご無事ですか、アッシュ殿」
「ああ、シリウスが譜術で援護しれてくれたからな。あいつらは上手くタルタロスを出航させた」
荒く息を吐きながら、アッシュは遠く見える艦を思いやった。
 
 

タルタロスを地核に沈めると、六神将のシンクが現れた。
シンクは強敵で、一行は全力での戦いを余儀なくされた。ようやく戦いに終わりが見え、シンクがよろめきながら膝を突くと、仮面が落ちた。その顔に一同は息を呑む。
仮面の下には、イオンと同じ顔があった。

シンクは嘲るように笑うと、イオンに話しかけた。
「僕等は導師イオンのレプリカとして作られた。なあ『イオン』」
青ざめたイオンが前に進み出た。

「皆さん、黙っていてすみませんでした。僕もレプリカなんです。本物のイオンは2年前に亡くなっているんです。 ・・・シンク、もうこんな事はやめてください」

「出来損ないの僕等は生きながらザレッホ火山の火口に投げ込まれたのさ!」
その言葉に一同は息を呑む。
よろよろと立ち上がったシンクは、地核の方に歩いていった。
 

「僕は何の為に生まれたんだ。おまえみたいに代用品ですらない。ただ肉塊として生まれただけだ
ばかばかしい。預言なんてものがなければ、ボクはこんな愚かしい生を受けずに済んだ。ボクは空っぽさ、
だが構わない。誰だってよかったんだ。預言を・・・第七音素を消し去ってくれるならな!」

 
そのまま地核に飛び込もうとしたシンクの腕を捕らえ、シリウスは一本背負いで投げ飛ばした。
胸倉を掴み、そのまま顔を殴り、怒鳴りつける。
 
「2歳児がナマ言ってんじゃねぇ! 人間の存在意義なんてモンはなあ、一生かかって探すモンなんだよ! お前を空っぽにしてんのは、おまえ自身だろうが! 美味いモン食って、楽しく遊んで、クソして寝ろ! 10年続けてまだ空っぽだなんて言いやがったらそんときゃ俺が殺してやる。
人形が嫌なら陰毛髭なんかに良いように使われてるんじゃねぇよ! わかったかクソガキ!!」
 
ボグッといい音がして、頭を殴られたシンクは動かなくなった。
 

 
「六神将のシンクは、地核に落ちて死にました。じゃあ、帰りましょうか、皆さん」
落ちていた仮面を拾い上げ、ぽいっと地核に投げ落とすと、シリウスはシンクを担ぎ上げた。
「ちょ・・・そいつをどうすんのよ! まさか連れて帰る気?」
「何を考えてるのよ、あなた」

「ああ、あんた達は使用済みのレプリカは捨てればいいと思ってるんだっけ。
・・・アニス、イオン様の前で、良くそんな事が言えるよね。散々ルークを人間もどきなんて罵って、イオン様はどんな気分だっただろうね」
「あ・・・ッ」
うつむいたイオンの哀しそうな顔を見て、アニスは真っ青になってガタガタ震えだした。
 

「ルゥは、反対するかい?」
並んで歩きながら、シリウスはルークに問いかけた。
「ううん。俺は生きてて、辛い事もあったけど楽しい事もいっぱいあったから、シンクにも生きてて欲しい。
・・・空っぽだなんて、哀しいよ」
真っ直ぐなルークの言葉に、シリウスは優しく微笑んだ。

 
譜陣を書き直し、アルビオールは空へと舞い戻っていった。
 


シェリダンに着くとアッシュとアスランが待っていた。住民や守りに着いた兵に重軽傷者はいるが、幸いな事に命を落とした者はいなかった。ティアやナタリアに住民の回復を任せる。

「どうしたんだ、それは」
シリウスに担がれたシンクをアッシュは怪訝そうに眺めた。
「ああ、2歳児の癖に生意気なこと言ってたから、ぶん殴って連れてきた」
「・・・お前、時々ワイルドだよな・・・」
呆れるアッシュに、にぱっとルークが笑いかけた。
「えぇー、すげぇかっこいいじゃん!」
「・・・・・・お前の能天気はいつもだな」


 
シェリダンの宿は負傷者が使っているため、数名の兵を守りに残し一行はベルケンドに移動した。
シリウス達が別荘に移動しようとすると、同行者が着いてきた。
アスランがにっこりと笑って一行を制止する。
「あなた達は宿でゆっくり休んでください」

不満を口々に述べる同行者の仲から、イオンが進み出た。
「シンクが心配なんです。僕も行っていいでしょうか」
イオンの真剣な表情に、シリウスは笑って頷く。
「イオン様が行くならあたしも!」
「アニスはこないで下さい。僕ならシリウス達が守ってくれるので大丈夫ですから」
近寄るアニスを振り返りもせず拒絶するイオンに、アニスの足が止まる。
同行者をそこに残し、シリウス達は別荘へと向かっていった。
 


 
「何で僕を助けたのさ」
ベッドに寝かせ回復術をかけると、やがてシンクの目が開いた。覗き込むシリウスを睨みつける。
「何となく。捻くれたガキになんか美味いもんでも食わせたくなった」
「あんた、馬鹿じゃないの?」
「子供を育てるのは大人の役目だよ。楽しい事、幸せな事、やっちゃいけない事教えるのもね」
シンクの頭のこぶをそっと撫でる。

そこに控えめなノックの音が響き、おずおずとイオンが入ってきた。
「何。失敗作を哀れみにでも来たの?」
俯いていたイオンは、意を決した様に真っ直ぐシンクを見据えた。
「シンク・・・僕はあなたがずっと羨ましかったんです。導師イオンの代わりじゃない、シンクという名のあなたが」
瞠目するシンクに決意したような表情で続ける。
「あなたが空っぽというなら、僕はただの身代わり人形です。シンク・・・一緒に探しませんか? 楽しい事、生きてて良かったと思えるような事」
「・・・・・・・・・」

「さぁて、じゃあ俺は飛び切り美味しい物でも作ってこようかな」
微笑んでぽんぽんとやさしく二人の頭を叩きながら、シリウスは出て行った。

「あんたも出て行きなよ。あいつに殴られた頭がガンガンするんだから! しばらく寝る。・・・飛び切り美味しい物とやらが出来たら、起こしに来てよね」
「シンク・・・! はい、おやすみなさい」
布団を被ってしまったシンクを泣き笑いで見ながら、イオンはそっと部屋を後にした。


 
キッチンではシリウスが楽しそうに料理をしている。
ルークが手伝い(という名の邪魔)をし、アッシュがそんなルークをフォローしている。

「あいつ、むかつかねぇか? 人のこと燃え滓呼ばわりしやがって」
「あー・・・ツンデレには、慣れてるからね。可愛いもんじゃないか」
「・・・なんか含みがねぇか? その言い方」
「アッシュ、ツンデレって何?」
「聞くな!」

 
やがて膨大なご馳走が出来上がり、兵士を含めた全員が舌鼓を打った。
運悪くくじに外れた見張りにもたっぷりと振舞われ、感涙を誘っていた。
イオンに引っ張ってこられたシンクも、無言で食事している。

「とても美味しいですね! シンク」
「・・・まあ、悪くないんじゃない」
「ほーらルゥ、あれがツンデレだよ」「そっか!」
「な・・・何いってんのさ!」

笑い合うシリウスとルークに怒鳴り、不意にシンクは脱力した。
「あーもう、馬鹿馬鹿しい」
「諦めろ。あいつらの能天気は筋金入りだ」
そういったアッシュを見遣ると、見慣れた眉間の皺が無い。
「随分と絆されたんじゃないの? 燃え滓」
「うるせぇ出来損ない。・・・もう諦めた。今までの自分が馬鹿馬鹿しくなるほど、居心地がいいんだよ、あいつらの側は。てめぇも今までが馬鹿馬鹿しいと思うんなら、好きな事すりゃいいだろ」
「好きな事ねぇ・・・とりあえず、人を使い捨てにしたあの髭に一泡吹かせてやりたいかな」

「シンク、協力してくれるのですか!」
「シンクー、手伝ってくれるのか。ありがとうな!」
ひしっとイオンに手を握られ、ルークに手を振られ、シンクは真っ赤になった。
「き・・・協力するなんて言ってないだろ! ・・・ああもう、わかったよ!」
 
 
 
 
翌日、今後の事を話し合うためにジェイドとティアが別荘に来た。
シンクを見て、僅かに警戒の表情を覗かせる。
「勝手な事をされては困りますね、シリウス。彼は六神将です」
「六神将のシンクは地核で死んだって言っただろう。ここに居るのは2歳児のシンちゃんだ」
「シンちゃん言うな!」

「信じるのですか、彼を。レプリカがどんな心境の変化です。あなたはレプリカを手懐けるのが随分お上手なようだ」

その言葉に激高する数名を手で制して、シリウスは静かに続けた。
「自分のために生きるのに、理由が要るのか。同じ命にレプリカも人間も無いだろう?」
「さて、私には命というものが理解できませんから」
眼鏡に手をやり、表情を隠すジェイド。

「あんたはまだ目を逸らすのかい?バルフォア。 ・・・あんたは解らないんじゃない、解りたくないだけだ」
「・・・・・・」

 

しんとしたその場の雰囲気を変えるように一つ手を叩くと、アッシュは話し始めた。
「外殻大地を降下させるには、各セフィロトツリーを回って書き換えをしなきゃなんねえ。時間短縮に別れたいとこだが、ダアト式、ユリア式二つの封印がな・・・」
「後はザレッホ火山、メジオラ高原、ロニール雪山、それにアブソーブゲートとラジエイトゲートですね」
「ダアトにあるザレッホ火山のダアト式封咒は開いている筈です」

「私が行くわ!」
ティアが名乗りを上げたが、シリウスが反対した。
「瘴気の排出は出来るようになったのか? 無理なら止めた方が良い」
「あなたには関係ないでしょ! 私はユリアの子孫として、兄さんを止めなきゃならないのよ」

ヒステリックなティアを呆れたように見ていたアッシュが口を挟んだ。
「やると言っているんなら良いんじゃないのか? 罪人の贖罪だろう?」
「何をあなた・・・失礼な人ね! 私は軍人として・・・」
「公爵邸襲撃、王位継承者誘拐、数々の不敬罪。どれをとっても極刑間違いなしじゃねぇか。モースだってそのつもりで崩落するアクゼリュスに送ったんだろう?」
「そんなはず無いわ! シュザンヌ様にはちゃんと謝りました!」
「誘拐したルークには罵倒しかしなかったんだろ。大体これだけの事しでかして、謝りゃすむと思ってるなんて、どんなお目出度い頭してんだよ。何が軍人だ。ダアトでお前の噂は聞いてるぜ。
『身分も階級も理解できないから、とても皆と一緒の職務に付けさせられない』ってな。ユリアは頭が痛いだろうぜ」
「あなた失礼だわ! 馬鹿にしないで!」
「事実しか言ってねぇだろ。止めてねぇから、好きにすりゃ良い」
 


メンバー割りは、侃々諤々の末、以下のように決まった。
ちょうどキムラスカからジョゼット・セシル小将、マルクトから贖罪のためにガイが送られてきていたので、彼らも含めて2組のグループを作った。
 
ルーク シリウス アスラン ジョゼット イオン シンク でメジオラ高原
 
アッシュ ティア ジェイド アニス ガイ ナタリア でザレッホ火山
 

戦闘バランスに難が有るが、アッシュがルークをあのメンバーと一緒にするのを嫌がったのだ。
「アッシュ・・・また自虐的なメンバーを選んだもんだね・・・」
シリウスが目頭を押さえる。
「しょうがねぇだろ! シンクが欲しいとこだが、代わりに回せるやつがいねぇ・・・そっちは前衛ばっかで平気か?」
「ああ、俺が後衛と回復をするから。みんな強いから、戦力的に問題は無いと思うよ」

「アッシュ~気をつけてな。終わったら、ケテルブルグで待ち合わせだかんな!」
ぐりぐりアッシュに懐きながらルークが言う。


ロニール雪山は魔物が強力な為、合流してから望む事になったのだ。
他に、ギンジとノエルの護衛に2名ずつ兵を選び、一行はそれぞれ飛び立った。
 

 

補足  シリウスについて

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Posted by tafuto - 2007.10.11,Thu


閑話  別荘でのひととき              11話と12話の間です
 
 


 
「どうした? 機嫌良いな、シリウス」

器用に芋の皮を剥きながら鼻歌を歌っているシリウスにアッシュが尋ねた。
「だってさ、ファブレ公の許可をもらったから、大っぴらにこの別荘使えるし。警護も居るから一晩中起きて無くて良いし。 ・・・あいつらと会う事もないし。良いことだらけじゃないか。アッシュもいるしね」

装置が出来上がるまでアッシュとルークは、ベルケンドのファブレの別荘に滞在する事になったのだ。
もちろん、あの同行者などは立ち入り禁止だ。アスランとギンジ、ノエルが連絡の為、シェリダンと此処を行き来している。
マルクトから着いてきてアッシュとルークに心酔した兵と、白光騎士団から数名、警護と連絡などに滞在している。
初めギクシャクしていた両国の兵士はすぐに打ち解け、協力するようになった。
主にアッシュとルークとシリウスの話で盛り上がっているのは兵士達の秘密である。
 


「さすがに何ヶ月もろくに寝てないのはきついね。一晩中寝れると、体力の回復が早いよ」
「野営の見張り、一人でしてたのかよ?」
「アスラン殿には少し任せた。あとは・・・役立たずが大勢居るより一人の方がマシってとこかな。
人ひとり完璧に守るのには、一人だと無理があるね」
10人以上の食事を軽々と準備しながらシリウスは朗らかに笑った。
「しばらくは、護衛以外のところで腕をふるうかな」

確かに時間と手間をかけた料理は絶品だった。兵たちは自分の幸せを噛み締めた。
ファブレから上等の日常生活用品も届けられ、シリウスは上機嫌でルークやアッシュの世話を焼いた。
 

 

「自分で出来るってば!」
別荘のでかい風呂場に向かっていたアッシュは、中から聞こえる騒ぎに怪訝そうに覗き込んだ。
「何してんだ・・・?」
そこでは袖と裾を捲り上げたシリウスが、ルークの頭を泡だらけにしていた。

「やあアッシュ。せっかくのルゥの綺麗な髪が痛んできたから、全力で手入れしようと思ってね」
良い笑顔でシリウスが振り返る。
「良いじゃねぇか。屋敷じゃメイドにやってもらってたんだろう? ・・・俺もお前の髪の色は嫌いじゃない、きっちりやってもらえ」
赤面したルークは大人しくなった。


丁寧に洗われ上質の髪油をつけて蒸しタオルを巻かれたルークは、ちらりとシリウスと目を見交わした後、身体を洗っているアッシュに視線を投げた。

そしてその後、こんどはアッシュが風呂場で大騒ぎする事となった。

きっちり手入れされ、きらきらのつやつやになった二人は、疲れ果て、けれど照れくさそうにお互いを見て溜息をついた。
 

「ふわふわだな」
「つやつやだね。アッシュの髪の色大好きだ」
「お前の方が綺麗だ、こんな血の色俺は嫌いだ」
「アッシュの方が絶対綺麗だ! 俺のは劣化してるじゃないか」


わいわい騒いでいると、飲み物を持ったシリウスが笑いながら入ってきた。
「何を言い争ってると思ったら。ルビーと夕日、どっちが綺麗? なんて問いに答えが出るはず無いだろう?  俺はどっちも好きだな」

アッシュとルークは同時に赤面して、おとなしく飲み物をすすり始めた。

 

ルークの勉強をアッシュが見てやったり、疲れたアッシュをシリウスがマッサージしてやったり、うとうとしているアッシュの横でいつの間にかルークが丸くなっていたり。


短い幸せな日々は、シェリダンからの連絡によって終わりを告げた。
 
 

 

Posted by tafuto - 2007.10.11,Thu

 


翌日、ジェイドが解読した歴史書によると、地表の液状化の原因はセルパーティクルによる地核の振動であることが分かった。
液状化を止めないと、外殻大地を降下させる事が出来ない。

シェリダンに同行する事を拒む技術者達に、アッシュが一喝した
「てめぇら、世界の存続よりプライドが大事か!」
大人しくなった技術者達は、シェリダンの技術者と共同で、地核の振動を止める装置と振動周波数測定器を作り上げた。

その間に、ルークとシリウスはアスランを連れてピオニー陛下にタルタロスの使用許可を取りに行き、アッシュはダアト式封咒を開ける為に導師イオンを迎えにいった。
アルビオールの2号機が完成し、傷の癒えたギンジがアッシュを乗せたがったのだ。
ダアトでアルビオールを奪われそうになったが、ギンジが機転を利かせて空に逃れていたため、大事には至らなかった。
 


振動周波数を測定する為、タタル渓谷にあるというパッセージリングに行こうとしたとき、メンバー割りに揉めに揉めた。
グランコクマから帰ってきたルークたちと鉢合わせして、早速ルークを罵倒するナタリア達にアスランがキレた。
アニスはイオンから絶対離れないし、ユリア式封咒の事を聞いたティアは自分が行くと息巻いて瘴気汚染の事など聞こえていない。
ナタリアはアッシュと居られれば良い様だし、ガイはルークに固執するがシリウスが近寄らせない。ジェイドは何処吹く風とばかりに傍観している。
アッシュはシュレーの丘のメンバーにイオンを連れて行きたいと思ったが、猛反発に会い口を挟めなかった。

 
「ああもう! 煩せぇ黙れ!!」

アッシュがキレた。それはもうぶっつりと。
「メンバーはジェイドとイオン、アニス、ティアそれに俺だ! ナタリアとガイは好きにしろ! ティア、自分で言ったんだから、後でぐだぐだ文句言うんじゃねぇぞ!」
「アッシュ・・・」
塩垂れるルークに回線を繋ぐ。

(別にお前を信用してないわけじゃねぇ。 ・・・お前がこの連中と行動するのは無理だ。精神が崩壊するぞ。くそっ思い出したらむかついてきた)
「お前はシリウスたちと外殻大地降下作戦の詳細を伝えてきてくれ。マルクトとケセドニア、ユリアシティだけで良い。ダアトとキムラスカは少し様子を見よう」
「わかった」

素直なルークに驚きながらも、ガイが口を挟む。
「じゃあ俺はルークと一緒に・・・」
「御断りします」
「なぜだ!」
自分を睨みつけるガイに、シリウスは冷笑して答える。
「あなたをルーク様に近づけたくないからです。ガイラルディア・ガラン・ガルディオス殿。自分の臣下であるヴァンデスデルカを押さえる事ぐらいして下さったらいかがですか?」
哀しそうなルークがそっとシリウスの袖を引く。
「ち・・・違うんだルーク! 俺は、お前を親友だと・・・」
何も言わず、ルーク達は去っていった。ガイはその場に立ち竦んだ。
 


結局ナタリアとガイも加えた7人でタタル渓谷に向かう。
無事に仕事を済ませたアッシュ一行は、ダアト式封咒のあった場所まで戻ってきた。
具合の悪そうなティアにナタリアが声をかけようとしたとき、突然ユニセロスが襲ってきた。
何とか撃退すると、ユニセロスは正気を取り戻し、ティアに向かって言葉を発したあと姿を消した。
「その者から悪しき気配がしている。その瘴気により我は狂ったのだ・・・」

「な・・・なんで私が!」
憤慨するティアにアッシュが語りかける。
「ユリア式封咒を解く時に、瘴気を身体に取り入れちまうって、シェリダンであんなに言ったのに聞いてなかったのか? だからシリウスがやるって言っただろ。身体のフォンスロットを調整すれば瘴気は少しずつ体外に排出されるそうだから、お前もさっさとそうするんだな」
「そんな事出来るわけ無いでしょ! 大体何であの人がユリア式封咒を解けるのよ。ユリアの子孫は私と兄さんだけよ!」

アッシュは呆れたように続ける。
「出来ないのに何で自分がやるなんていったんだ。死ぬ気か? 俺は別にかまわねぇけどな。
大体お前の先祖は2000年間ずっと子供を一人しか生まなかったのか。先祖の兄弟なんて沢山居るだろ? シリウスの祖母はユリアシティの出身だ」
「何ですって! あの人何でそんな大事な事黙ってたのかしら。本当に失礼な人ね!」

「お前にとって大事でも、あいつにとってはそうでなかっただけだ。それともユリアの直系に媚び諂えとでも言う気か? たいした傲慢だな」
アッシュは吐き捨てるように呟いた。
 


イオンを連れてトリトハイム師にこっそり会いに行き、降下作戦の詳細を伝える。
トリトハイム師は、ヴァンに賛同する者以外の協力を約束してくれた。

シェリダンに戻るとルークの提案で、和平を締結させて両国の協力を取り付けようという事になった。後はキムラスカだけなので、すぐにでも向かおうという一行に、ナタリアが口篭りながら静止をかけた。

「少し考える時間が欲しいのです・・・」
「ナタリア・・・少し付き合え」
ナタリアをじっと見ていたアッシュは、声をかけ展望台に誘った。
嬉しそうなナタリアとは逆に、アッシュは無表情に話を始めた。

「ナタリア、お前は来なくて良い」
「何を言いますのルーク、心配なさらないで。お父様の事でしたら、きっと乗り越えて見せますわ。約束をしてくれたあなたが居てくれるのですもの!」
「俺はアッシュだと何度言えば分かる。お前を心配して言っている訳ではない。民が大勢死ぬかもしれない時に、お前はいつまで自分の事ばかり言っている。
バチカルで偽姫といわれ傷ついたたお前が、なぜルークを偽者と罵れるんだ。
お前は変わってしまったな、ナタリア。俺が約束したナタリアは民の幸せを一番に考えていたのに。・・・最も、お前が約束した『ルーク』も、もう居ないがな」

その場から去ってゆくアッシュを、声も出せずに呆然とナタリアは見送った。
 


無表情に戻ってきたアッシュを心配して、ルークが近寄ってくる。
それに疲れたように笑い掛けるとアッシュは話しはじめた。
「ルゥ、お前はシリウス達とグランコクマに行ってろ」
「ええっ、また一緒に行けないのかよ!」
「(俺だってお前やシリウスと行きてぇよ)・・・アルビオールがせっかく2台あるんだ。回線で連絡できる俺とお前が一緒にいるより、和平が決まった時点で速やかに移動できるようにしておいたほうがいいだろう。聞き分けろ」
「うーわかった。でも本当に無理すんなよ! アッシュ」
「モースさえ何とかなりゃ、叔父上は頷いてくれそうだった。多分何とかなるだろ」
溜息をつくアッシュに、笑いながらシリウスがさらっと言う。
「あの糸目狸野郎、目障りだ。アッシュ、暗殺でも依頼しないかい?」
「・・・・・・いや、さすがにそれは・・・」
 
 

翌日、アッシュ、導師イオン、アニス、アスランがキムラスカに向かう事になった。
ルーク達と同行する事を拒んだティアと、消沈していた所をティアやアニスに引っ張ってこられたナタリアも同行することになった。(アッシュはティアやアニスに散々詰られた)
ジェイドとガイはキムラスカに含みが多すぎるので、マルクト行きに同行する事にした。

アッシュとシリウスはちらりと目と目を見交わし、同時に溜息をついた。
(お互い大変だな。頑張ろうぜ)
二手に分かれたアルビオールは、それぞれの場所に旅立っていった。
 

バチカルに着いたアッシュは、一行を目立たない所に案内すると、一人でファブレ公爵の屋敷に向かった。公爵への取次ぎを頼むと、アッシュの顔に息を呑んだ門番が慌てて駆け出していった。
しばらくすると公爵の執務室に通される。そこには父であるクリムゾンが居た。

「元六神将の鮮血のアッシュ殿か。私に何用だ」
「前回、開戦に反対したと聞き及んでおります。私は和平を進言する為に、キムラスカを訪れました。導師イオンも同行しております。なにとぞ、陛下への取次ぎを御願い致したく参上しました」
跪き礼をとるアッシュの赤い髪をじっと見ていたクリムゾンは、しばらくの後承諾の意を伝える。

退出しようとしたアッシュに、クリムゾンが独り言のように話しかけた。
「私には二人の息子が居てな。上の子は随分と辛い目にあわせてしまった。私を恨んでいると思うかね?」
「・・・・・・私には解りかねますが、きっと父親は公爵様お一人だと思っている事でしょう」
 

一行と合流し、クリムゾンの先導でインゴベルト国王の私室に通された。
預言が外れた事とヴァンの企み、世界の現状を話し、和平の必要性を説く。
しばらく考え込んでいたインゴベルトは、しばらくして頷いた。
「わかった。預言などに任せていたら、世界は滅びてしまうだろう。 ・・・和平を行おう」
「ありがとうございます。陛下」
「良かった、お父様!」
感極まったようにナタリアが声を上げる。
それをじっと見やると、インゴベルトはナタリアに話しかけた。

「ナタリアよ、お前がわしの血を引いていない事は事実だった。しかし今まで親子として暮らしてきた事もまた真実だ。お前はわしの娘だ。忘れるでないぞ」
「お父様!」
涙ぐむナタリアに、インゴベルトは辛そうに続ける。
「娘だからこそ、言わねばならない事もある。・・・お前は王命に背き出奔した。その罪は問わねばならない。ナタリアよ、王位継承権の剥奪を命ずる。これからは一臣下として国を支えよ。しばらくの間その者達と同行し、自分を見つめなおすがいい」

ナタリアは言葉を失った。
不満気に声を発しようとするティアとアニスを睨みつけて黙らせると、アッシュは和平条約締結に向けてグランコクマのルークと連絡を取り始めた。
話し合いの結果、ユリアシティで会談がもたれる事となった。
 
 

「アッシュ!!」
国王やファブレ公爵と共にユリアシティに降り立ったアッシュは、先に来ていたルークの迎えを受けた。飛び付いて来たルークの頭を苦笑して一発殴ると振り返った。
「しゃんとしろ『ルーク』。国王陛下がいらっしゃるのだぞ」
「あ、すみません陛下。ありがとうございました!」
あわあわするルークにインゴベルトは苦笑を返す。
「礼を言うのはこちらの方だ。ルークよ、お前を預言の贄に差し出したわしを許してくれるか」
「そ・・・そんな!」
パニックになるルークを、シリウスがそっと落ち着かせる。
そこにクリムゾンが進み出た。
「シリウスよ・・・良くぞ我が息子達を守り支えてくれた。礼を言う。ルーク・・・立派になったな」
「父上・・・」
泣き笑いの表情を浮かべたルークの背中を一つ叩くと、アッシュは一同に向き直った。
「ご案内いたします」
 


ケセドニアのアスターも含めて、和平条約が締結される事になった。
調印しようとしたその時、ガイがファブレ公爵に刃を突きつけた。
「ホドの時とまた同じようになるんじゃないのか?」
一瞬固まっていた人々の中からすばやく飛び出した影が、ガイの刀を奪い床に叩きつけた。
咳き込むガイを見ながらクリムゾンは言葉をかける。

「約束しよう。ガイラルディア殿」
「な・・・知っていたのか!」
「ユージェニーとは知己なのでな。お前もペールギュントの顔も知っていた」
「何故だ! 俺の家族を皆殺しにし、ホドを崩落させたくせに!」
床を拳で叩きつけるガイを抑えながらシリウスは言った。
「公爵は、ガルディオス家の襲撃を命じてないよ。あれは前の戦いでガルディオス伯に家族を殺された下級貴族が、個人的な恨みで先走ったんだ」

「ガイラルディア、ホドが崩落したのは、フォミクリー技術の流出を恐れた先のマルクト皇帝が、超振動でデータを消そうとしたからだ。音機関に繋がれて超振動を引き起こされたのが当時11歳のヴァンデスデルカ・・・ヴァンだ」
続けられたピオニーの言葉にガイは絶句し、動きを止めた。
「そんな・・・俺は、何の為に・・・」
呆然と呟くガイは兵士に連れて行かれた。
 

「済まなかった、インゴベルト国王、ファブレ公。けしてマルクトに他意はないのだが、このまま調印してもよろしいだろうか」
「私はかまいません、ピオニー陛下」「うむ」
インゴベルトとクリムゾンも賛同し、和平条約がここに締結された。

いよいよ外殻大地降下作戦が決行に向けて動き出した。
 


 

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