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同人二次創作サイト(文章メイン) サイト主 tafuto
Posted by - 2024.04.29,Mon
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Posted by tafuto - 2008.01.27,Sun

 

エルドラントが落ちたという知らせがルークの元に届いた。
海に落ちたエルドラントは崩壊し、巨大な光の柱が天に立ち昇ったという。
それと同時に、世界各地にあふれていたレプリカたちが乖離してしまったという知らせが続々と届く。
ベルケンドからは、天に第七音素の音譜帯が形成されたとの報告があった。
そしてそこには、濃密な第七音素がレムの塔周辺に収束しているとも書かれていた。


「何がおきている?」
考え込むルークに、ジョゼットの震える声が掛かった。
「ルーク様、ローレライが解放されたのでしょう。・・・そして、アッシュ殿はその命を駆けて瘴気を中和するつもりです。」
驚愕したルークは、ジョゼトの腕を強く握りしめた。
「何で教えてくれなかったんだ!・・・彼を止めなくては。」
部屋から飛び出そうとしたルークにジョゼットは叫んだ。
「待って下さい!・・・私も行かせてください。」

彼をこのまま死なせたくはなかった。
『ルーク』を忘れろとは言わない。しかし『ルーク』を心に抱きながらでも、幸せになる方法はあるはずなのに!
(あのアスランは私の『アスラン』ではない。・・・けれど、新たな関係を築く事は出来るかもしれない。彼にも、あんな暗い眼をして死んで欲しくない。)


頷いたルークと共に、ジョゼットはレムの塔に急いだ。
アルビオールを飛ばし、塔に程近いところに着陸させると、ルークはレムの塔を仰ぎ見た。
紫色の空の下、圧力さえ感じさせる程の第七音素が感じ取れる。
それは、塔の頂上付近に渦を巻いていた。
「ジョゼット、行こう。頂上だ!」

ルークが走り出そうとしたその時、頂上で光が放たれた。
光は第七音素を巻き込み、糸を縒りあう様に天に立ち昇っていった。
息を呑んだルークが、弾かれたように走り出した。
「ルーク様!」
二人はエレベーターに飛び乗り、頂上に向かった。
エレベーターが上昇する間、無言の時が流れた。
ルークは自分の胸元を握り締め、俯いた。右手の指輪がちらちらと光っている。

(穏やかな哀しみと安らぎに満ちた感情がぼんやりと伝わってくる。・・・胸が痛い。あの人は、誰を想っているの?)


中和にルークが巻き込まれるのではないかと思い至り、蒼白になったジョゼットは、指輪がルークを守っている事に気付いた。
『これから俺がすることからルークを守る』
彼はずっと前から、こうするつもりだった。
ルークを守り、全てを終わらせて『ルーク』の元へと還るつもりなのだ。


エレベーターのドアが開く。
ローレライの剣を天に突き上げていたアッシュが、ゆっくりと振り返った。
走り寄るルークの背後から、ジョゼットがアッシュに叫んだ。
「どうして、どうしてあなたは幸せになろうと思わないのです!」

不意にアッシュが微笑んだ。今まで見たことも無いような穏やかな笑み。
その幸せそうな表情にジョゼットはこれ以上言葉が続けられなかった。
彼のもとに還る事が、アッシュにとってただ一つの願いだったのだ。


「出来なかった。そう考えた事もある。でもどうしてもダメだった。・・・俺の光はあいつだけなんだ。」

澄んだ、無邪気とも言える瞳でアッシュは微笑んだ。

にっこりと笑ったアッシュの表情に、ルークの足が止まった。
美しい翡翠が、優しく細められる。


「ルーク、良い王様になれ。・・・・・・幸せに。」


アッシュは、澄んだ輝きを取り戻した大空を抱きしめるように両手を差し伸べた。
指先から金の光が蒼穹に還っていく。
優しい、幸福そうな笑みがこぼれた。

『ルーク・・・・・・今、お前の元へ還るぞ・・・』

深紅の髪に、伸ばした指先に、うっとりと閉じられた目蓋に、朱金の光がまるで蛍のように寄り添っては天に昇っていった。

 

 

幸せそうに消えていった男を、ルークはただ見つめていた。
両の瞳から涙が滴り落ちる。

とても大切なものが、今、消えてしまった。
ずっとずっと守ってくれていた。
・・・大切な、人。


「ジョゼット、いつか・・・あのひとの事を聞いてもいいかな?」
「ええ、・・・いつか、必ず・・・」

ルークの頬を、最後の涙が伝った。
彼が取り戻してくれたこの空を、これから守っていくのは自分だ。

これからは、一人で歩かなければならない。
“彼”に恥じないように。


ルークはそっと誓うように右手の指輪に口付けた。

 


レムの塔を後にするルークは、最後に一度だけ振り返った。

 





彼が還っていった青空は、美しかった。

 

 


                     END

 

 




あとがき

こんな暗い話にここまでお付き合いくださいまして、ありがとうございました。
この話はこんな拍手返信から生まれました。↓

『私、逆行先に居る人達って基本的には『良く似た別人』だと思うのですよ。
だから大爆発後のアッシュは自分の亡くしてしまったルークを思い続け、逆行先のルークは保護対象になるんじゃないかと・・・だからアシュルクにならないんです。
むしろ、早くルークの所に行きたいとばかりに自分を犠牲にする気がします。大爆発した時点でもう何処か壊れてしまっていると言うか・・・
つまり、すんごい暗い、自殺願望のアッシュしか思いつかないんです。』(抜粋)

アッシュはこの世界のルークを幸せにして、自分の半身の元に還りました。アッシュ自身はやり遂げた感満々でけっこう幸せだったと思います。
ちなみに逆行アッシュもこの世界のオリジナルルークも小さい頃から死にたかったという設定です。オリジナルルークにとってアッシュは救いだった。
ここのルークはアッシュと3度しか会ってませんから、憧れの王子様って感じで恋愛感情まで行ってません。どっちかというとお父さん。(いや、どうだろう?私なら惚れる。) ・・・きっと立派な王様になると思います。

さて、一番救われないのは誰なんでしょうね? (殺しちゃった人を除いて)
生きて新たな幸せ掴む事が良いのか、後を追うことが幸せなのか、私には解らないのです。




追伸

うわ~、やりきれねぇ!とか思っていやな気分になってしまった方は、どこかの音譜帯でこのアッシュとアッシュの半身の(大爆発をおこした)ルークと、殺された10歳のオリジナルルークが親子のように川の字になって眠っている所でも想像して下さいませ。
そのうち寿命で死んだこっちのルークも(子供に戻って)合流して、4人で仲良く擬似親子とか。


ちょっとした小ネタを考えてみました。 →ルーク王と仔アッシュ 

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